「レスコンシンポジウム2010」参加レポート

神戸市長田区の神戸市立地域人材支援センターにおいて、「レスコンシンポジウム2010」が開催されました。8月に開催された第10回レスキューロボットコンテストで、レスキュー工学大賞を受賞した救命ゴリラ!Sチームは、「救命ゴリラ!」のロボット開発秘話〜信頼できるロボット開発に必要なこと〜」と題して、自由工房のロボット開発スケジュールを中心に活動内容を発表する機会をいただきました。

シンポジウムでは阪神淡路大震災で災害救助に尽力されたレスキュー隊の方、被災者の方のお話を伺い、改めて自分たちの活動の意義を振り返ることができました。また、次回レスキューロボットコンテストの開催要項の発表もありました。今日から、新しい目的に向けて、メンバー一丸となってスタートを切ります。

公式サイト

レスキューロボットコンテスト:レスコンシンポジウム2010

「救命ゴリラ!Sチーム」の発表

「救命ゴリラ!Sチーム」の発表は、高橋裕一朗君(情報工学科3年)、中島誠君(コンピュータサイエンス専攻1年生)、浦野蒼士君(電子機械工学科2年)の3人がリレー形式で発表しました。

まずは高橋裕一朗君から、自由工房から出場した2チームの開発コンセプト、開発スケジュールについて発表しました。

第10回レスコンには、SチームとBチームの2チーム体勢で挑みました。過去大会の反省を踏まえ、メンバー増員、ロガーダミヤンの導入、ソフトウエア設計班の増設と開発体制を整えました。

2009年9月からアイデア出しを行い、2〜3月にロボットが動き出し、6月には全てのロボットが動いていました。

このように体勢を整え、スケジュール管理をしっかりと行うこと、確実に動くロボットを創り上げることができました。

大会では、競技の成績とともに「高い完成度、新しい技術とアイデア、定量評価を踏まえた安全性と信頼性」を委員会に高く評価していただくことができ、レスキュー工学大賞受賞につながりました。

続いて、中島誠君が「ロボットの作り方」の説明をしました。

大会で使用されるダミヤンは、複数のセンサを搭載しており高価・高機能。そのため、練習用に、機能を限定し安価なダミヤンを開発しました。これをロガーダミヤンと呼んでいます。

ロボット開発にあたり、優しい救助を実現するために、このロガーダミヤンを使って実験や操縦練習を繰り返しました。

その事例として、Bチーム1号機開発時のロガーダミヤンの定量評価について説明をしました。ロガーダミヤンに搭載したセンサーデータを解析し、ダミヤンを搬送する場合のベッドは床と平面よりも斜めの方がよいことが判明しています。こうした実験を繰りかえし、ダミヤンに対する優しいロボット救助を実現しました。

Sチームの全機種は、モジュール化した救助機構で、信頼性を向上しています。モジュール化も、スムースで確実なロボット開発には重要な技術です。

最後に浦野蒼士君が、各ロボットに搭載されている新しい技術やチャレンジについて説明しました。

多くの方がメモを取りながら熱心に発表を聞いてくれました。スケジュール管理を徹底した開発手法を紹介したときは、会場から特に大きな反応がありました。

質疑応答で、第11回大会への取り組み状況を尋ねられ「アイデア出しは終わり、設計や試作の段階に入っています」と答えると、会場から「早っ」というつぶやきが聞こえました。

発表後にブース展示があり、実際にロボットを動かすようすを参加者の皆さんに間近で見ていただきました。熱心に動画撮影する人や、質問をしてくれる人があり、苦労して準備した甲斐がありました。

講演

シンポジウムでは、阪神淡路大震災で救助にあたった神戸市消防局の高村浩二氏や、河合節二氏(野田北ふるさとネット事務局長)の講演、神戸市が保有している特別高度救助隊の資機材を間近でみる機会がありました。

高村氏からは、実際のレスキュー現場で活動する立場から、レスキューロボットに期待することは「検査・進入口の確保・要救助者の搬出」であるとお話しがありました。特に、要救助者の探索は重要で、レスキュー隊員が入れないような狭い場所で、ロボットが素早く確実に救助者の存在を確認をしてくれれば、救助活動がスムースに行くそうです。検査するためだけに特化したものなら、もっと小さくできるのでは? ないかという意見がありました。

講演の後、現在、現場で活用されている特別高度救助隊の資機材を実際に触って体験できました。

河合氏の講演では、大震災の際には、公的救助は手が回らないため、自助(自らを助ける)・共助(共に助け合う)ことの大切さをエピソードを交えてお話しいただきました。目の前に要救助者がいた場合、好きな人親しい人から助けるのは人情として当然だが、嫌いな人であっても最後の順番で助ける。しかし、忘れられている人は助けて貰う機会すらない。日頃から、周囲とのコミュニケーションを大切にし、助け合える人間関係を構築しておくようにというお話しが印象的でした。

河合氏は、ご自身の体験から「一家に一台ロボットスーツがあり、家族全員が使えて救助にあたれるのが究極の理想」といいます。

人間の力はたいしたことがないかもしれない。けれど、コツコツと、みんなで協力しながら諦めずにことに当たれば、成果は出てくる。皆さんの勉強や研究も、一朝一夕で叶うことでないことは判っているけれど、夢と期待を持ち続けてほしいと、締めくくられました。

壮大で遙か遠くにある夢ですが、我々の活動もそこにつながっていればと思います。

第11回レスキューロボットコンテストについて

休憩を挟んで、第11回レスキューロボットコンテストの説明がありました。

第一関門の書類選考〆切りは例年通り1月末日です。今年は17〜20チームが採択され、6月の予選で、本選に出場する14チームが選出されます。

大きな変更点として、下記の3項目がありました。

  • ロボットに使用できるエネルギー源
  • ロボット番号の表示方法に関する項目
  • ミッションポイントの点数配分

ダミヤンは、ボディに丸みがつき、首のセンサが空気圧から磁気式に変更されます。個体識別は前回同様ですが、ミッションポイントの割合が高くなります。委員会から、「マーカー以外の認識技術にも積極的に力を入れて欲しい」という要望がありました。また、どのダミヤンをどのように個体識別しているのか、競技中に観客に伝わるようなアピールがあるのが望ましいということです。

特殊ガレキにも変更があります。倒柱ガレキは、角柱が円柱(塩ビパイプ)に変更になりました。

家ガレキの形状は変化がありませんが、ガレキの配置が厳しくなります。次回からは、家ガレキの中にもガレキが入ることを想定して救助活動しなくてはなりません。どのようなガレキが入るかは、当日までわかりません。

電源については、書類選考を通過したチームに委員会推奨電池の案内があるそうです。

レスコンボードにも機能が追加されました。

音声入出力ライブラリーが公開され、個体識別の音声認識に挑戦しやすくなったようです。音声合成ソフトとも結合し、テキストを読み上げる機能があるので、音声で救助の実況中継をしたり、ダミヤンへの声掛けなどもできそうです。