2010年 ルネサスマインカーラリー競技大会
8月21日(土)、22日(日)に東京秋葉原で開催されたルネサスマイコンカーラリー競技大会に、自由工房から5名が出場しました。出場メンバーは、8月9日に学内予選を行い選出しました。
レポート
試走会
21日の早朝に秋葉原駅に着きました。周辺で時間を潰し、受付時間の30分前程度に会場に行きました。すでに30名程度の参加者並んでおり、開始10分前には行列が大きくなりすぎたため、予定より早く受付が開始されました。
受付後、1時間ほどで試走会が開始されました。去年は大会当日の午前中が試走会、午後が大会でした。今年は試走会に1日が割り当てられていたので、時間は充分ありました。大会の雰囲気は今までと変わらず、適度な緊張感に包まれ見知った顔も多く楽しかったです。
今年から、新たな課題が設けられました。事前に、「白黒反転区間、または中心線無し区間のどちらかを設ける」と告知されていましたが、どちらが設定されるかは試走会まで判りませんでした。自由工房では、現存のコースに同素材のシールを貼って、2パターンのコースを仮設しプログラムの対策を取りました。
試走会で公開されたコースは長さ59.75mで、地区予選より大きめですが、全国大会にしては小さかったです。予想より短いけれど、全体的にストレートが少なくカーブが連続していました。クランクが4ヶ所、レーンチェンジが2ヶ所、白黒反転エリアが1ヶ所と難しい箇所が多かったです。レイアウトを見て、「タイムは、伸びないだろう」と感じました。
実際、試走会では全体を見回しても完走しているのは1/4程度しかありませんでした。僕達は、会場の照明条件が自由工房とは異なるためセンサ感度が違い、センサが左右に微震するようになっていたので、再調整が必要ででした。富田信君(電子機械工学科2年)のマシンは回路の異常が発生し、まともに走行できない状況なってしまいました。結局、自由工房のメンバーも、全員試走会は完走できませんでした。
2010ルネサスマイコンカーラリー競技大会コース
公式サイトpdfより転載
予選
翌22日の大会本番でも、新しいルールである反転コースで落ちるマシンが多いように思えました。そうした中で、さすがだと思ったのは、昨年度優勝者の徳永弦氏です。富永氏は、前日の試走会で終盤に、「件」のシリコンシートが剥離し、制御を失いコースアウトしセンサーバーが破壊されてしまうトラブルがありました。けれど、翌日には交換修理され、何事もないかのように走行していました。徳永弦氏には、マイコンカーオープンセミナーでマイコンカーの制御について講演をしていただいていますが、会場でのトラブルに冷静に対処している場面を見て、改めてすごい方だと思いました。
当日になり会場で「スタート時のマシン設置は30秒以内」とルール変更がアナウンスされました。参加者が増え、競技を円滑に進めるためでしょうが、少し短か過ぎる気がしました。
予選は、1走行目での完走率が2割程度と、非常に低くかったです。決勝の枠32人が埋まるか不安になるほどでした。しかし、2走行目で上位が1/100で競い合う程タイムが縮まり、結果としては、速いいマシンだけが完走できたような印象です。
自由工房メンバーは、和田貴大君(情報工学科3年)の「XとんかちX」が00’18″82、安慶名将君(電子機械工学科2年)の「マリオネットVer3」が00’24″27で完走しました。31位の和田君が唯一、決勝トーナメントに進出しました。
予選動画
- 和田貴大君(情報工学科3年)(WMV形式 4.9MB)
- 安慶名将君(電子機械工学科2年)(WMV形式 6.1MB)
- 富田信君(電子機械工学科2年)(WMV形式 2.5MB)
- 石村仁志君(医療福祉工学科3年)(WMV形式 4.0MB)
- 大林尭史君(電気電子工学科2年)(WMV形式 4.7MB)
予選タイム
和田貴大君(情報工学科3年) | XとんかちX | 00’18″82 | 31位 |
安慶名 将君(電子機械工学科2年) | マリオネットVer3 | 00’24″27 | 41位 |
決勝トーナメント
決勝戦は、予選と同じコースですが、タイムトライアルではなくトーナメント形式になります。同時に走行する相手よりも、速くゴールできれば勝てるので、予選とは違う作戦が必要になります。和田君は、1回戦で今大会優勝者の深澤則正氏の「テスタープロト」とあたり、敗退しました。
予選の最高タイムはFRAGILE010(製作者:河野 純也氏)の00’15″12でしたが、決勝トーナメントでは、記録が次々と塗り替えられ14秒台で走る人が出ていました。事前の予想に反して、速いタイムでした。マイコンカーラリー大会は、毎年マシンの秒速が0.2メートル秒ずつ上がり、今大会はついに秒速4メートルのマシンが現れました。競技会で、素晴らしいマシンを間近で見ることができました。
決勝トーナメント動画
スナップ
大会の感想
和田貴大君(情報工学科3年)
大会に向けて、マシンの制御方法をデジタル制御からアナログ制御に変更しました。デジタル制御は、一定以上白線からのズレがないと反応できませんが、アナログ制御なら、アナログセンサで微量な変化を読みPD制御できます。しかし、マシンの機械的直進性の調整が完璧にできないまま試走会を迎えてしまいました。その結果、試走会では完走できませんでした。
そのため新ルールのコース色反転部分に不安を残したまま、大会当日を迎えました。予選の1走行目は、試走会中に書き直したプログラムにバグがあったため、反転部分でコースアウトしてしまいました。
2走行目は、バグを避けるために別のプログラムを選択しました。このプログラムは、スタート時に、マシンがわずかでも斜めになっているとコースアウトする可能性があり、その点が不安でした。特に今大会は、セッティング時間が30秒と短くなっていたため、いつもより緊張しました。なんとか時間内によい状態でスタートすることができ、18.82秒という記録を出せました。
去年よりもかなり速く走れたはずなのに、予選の最終結果は31位でした。例年ならば、上位の差がここまで近接することはなく、このタイムならば20位ぐらいにはなるだろうと踏んでいました。それだけに、非常に残念でした。
今年はコースが短くストレートがほぼない状態であったため、タイムに差が付きにくくなったのではないかと思います。
決勝トーナメントの相手は、優勝者の深澤さんでした。予選タイムが圧倒的にあったので、相手がコースアウトすることに期待をかけ、設定を変えずに挑みました。内心、深澤さんが落ちるのを祈って真下が、さすがに安定した走りでゴールしました。
自分のマシンは、上位入賞者と比べるとカーブでの速度低下が大きかったと思います。来年も機会があれば、ぜひ出場して上位を目指したいと思っています。
安慶名将君(電子機械工学科2年)
予選の1回目は、マシンが走りませんでした。2回目は24.27秒で完走できました。しかし、決勝トーナメントの準決勝以上のマシンと比較すると、約10秒も遅かったです。
今回出場して、まだまだマシンの調整と準備不足だった事を痛感しました。マシンの点検をする時に、機械的な部分だけでなく、電装部分の点検もしっかりやっておけばよかったです。次回はモーター周りやタイヤなど機体準備を万全に整えてたいです。また、プログラム面ではカーブの処理を見直そうと思います。トレントを広くしたり、ハンドルをきるスピードを速くしたり、ボディ部分にもセンサーをつけて車体全体のコースの上での状態を検知出来るようにするなど、工夫を重ね悔いを残さないように努めたいです。
石村仁志君(医療福祉工学科3年)
昨年から一般の部が分離して、秋葉原で開催されるようになりました。今年は、ルネサスマイコンカーラリー競技大会の第2回大会になります。去年に比べコースが短くなりましたが、密度が上がり難易度に大きな変化はないと感じました。
僕のマシンは、予選で2走ともコースアウトという悔しい結果になりました。クロスラインから直角クランクまでのスピード制御がうまくいっていなかったせいで、ラインからクランクまでの距離が可変したときに対応できずコースアウトという結果になりました。
他をどれだけ完璧にしても、たった1か所のミスで、記録すら残らなくなってしまうという現実を思い知りました。
会場で、大会上位の方のマシンと自分たちとのマシンの違いを去年より多く見つけることができました。
マシンが高速でカーブに突入すると、遠心力で内側のタイヤが浮きやすくなります。上位のマシンは、カーブを確実に走行するために、車体の重心を低く設計していました。それに加えて、タイヤの幅を広くしたり、車体の幅を広くして左右のタイヤの距離を広げていました。他には、ブレーキングの時に車体が跳ねるのを防止するために、前輪から後輪までの距離を長めにしていました。
速いマシンと自分のマシンを見比べることができたのは、とてもよい経験でした。今後のマシン改良に生かして、電通大杯までには安定した記録の残せるマシンにしていきたいと思います。
大林尭史君(電気電子工学科2年)
今回の大会では予選で2回走行させて2回ともコースアウトと言う結果でした。1走目は、カーブのトレースがうまくいかずコースアウトとしてしまいました。2走目は、カーブ対策としてプログラムを変更し、スピードも落としてて挑戦しました。そうしたら、それまで走っていたクランクで落ちてしまいました。
実は、大会の1週間前に、カーブ走行時にトルクを上げるため、サーボモーターのギヤを変えました。これで、マシンバランスが全体的に変わってしまいました。その調整に予想以上に手間取ってしまい、満足な仕上がりになりませんでした。その結果、前日までにプログラムの修正がまにあわず、デバッグが十分にできませんでした。
今のハードでは限界があるので、改めてハードの改良をしていきたです。ただし今回の経験を活かして、今後は、もっと時間に余裕を持ってマシンを調整します。ソフトを十分理解した上で改良し、マシンの性能を引き出して大会に挑みたいです。
富田信君(電子機械工学科2年)
今大会の結果は、予選落ちの記録なしでした。原因は会場への移動中にマシンを壊してしまい、前日に行われた試走会で1度も走らせることができなかったからです。
壊れたのは、梱包が甘くて移動中の振動のせいだと思います。会場で、バッテリーを搭載しスイッチをいれた途端、モーターがショートして基板が壊れた。モーターは予備に換装した。壊れた基板の部品は秋葉原で購入し、宿に帰ってから修理しました。原因が分かっていたので、1時間半くらいで修理ができました。
結局、大会はぶっつけ本番になってしまいました。コースは去年より短かったですが、今年から導入された3本線で難易度が少し上がっていたと思います。試走会で調整できなかったため、1走目はコースアウト、2走目は走行中にマイコンがリセットして停止してしまいました。
リセットの原因が不明です。学校に戻ってから走らせたら、動いたのが納得できません。来年こそは全力が出せるようにがんばりたいと思います。
増田健剛君(電子工学科3年)
今回の大会で、上位に入賞している人たちは「状況適応力」が私たちとは違うなと感じました。
今回は、コースに新しい課題が2つ加わりました。1つ目は既存コースの白黒が反転すること、2つ目は中央線がなくなることです。新コースを完走するためには、今まであったクロスラインも考えつつ、新しいコース用の線もトレースしなければなりません。自分的には、Lv4の難易度でした。ところが、トップクラスの人は即座に新しい方法を取り入れ、大会のコースを完走していました。
新レギュレーションに対応する、ということは「新しいアイデア(プログラムetc)」を取り入れるということで、今までの「安定」が失われてしまいます。しかし、すぐに安定状態を取り戻し、走行できていることが大きな違いだと感じました。
自由工房の練習コースでは走行できていたので、出場できれば大会でも完走できたと思います。来年の大会は、じっくりマシンの性能限界を見極めつつ大会日程に照準を合わせて仕上げて行きたいと思います。
鹿島健吾君(電子機械工学科1年)
私は、今回は先輩のサポートとして大会を見に行きました。
マイコンカーは高校生のときから取り組んでいたのですが、一般の全国をしっかりと見たのは今回が初めてで、あらためて全国はレベルが違うなと感じました。
このことを刺激に、来年の出場へと、頑張って行きたいです。