2015年度ルネサスマイコンカーラリー競技会

2015年8月22日(土)にマイコンカーラリー競技会&技術交流会がルネサス半導体トレ-ニングセンターで開催されました。自由工房からは3台が出走しました。

コース図

全長60.85m。公式サイトより転載

公式サイト

ルネサスマイコンカーラリー競技会&技術交流会

メンバー感想

藤江啓太君(電子機械工学科3年)

私は、ルネサスマイコンカーの大会に初めて出場しました。結果は残念ながら、完走することはできませんでした。

因は調整が甘かったことです。実験レポートや製図の課題があり、夏休み期間になるまで調整するタイミングがなく、2週間ほどしか調整期間がありませんでした。マシンのハードウェアの組み立てに2,3日とられたこと、走行解析プログラムになんらかのバグがあり解析ができなかったこともあり、プログラムをじっくり考える期間がありませんでした。

プログラムの調整内容としては、通常トレース、クランク及びレーンチェンジという流れで調整していました。

通常トレースは、速度を落とした状態で確実に走るように調整していました。

カーブでは速度を落とした状態ではしらなかったため、マイコンについているディップスイッチ(モータの出力を変えることのできるスイッチ)に依存しない関数(motor2関数)を用いて調整しました。

クランクは、handle関数(角度指定)を用いて調整を行っていましたが、曲げた時に指定した角度以上に曲がってしまい指定した角度に戻そうとする動作をして安定しなかったので、handle関数をやめ、モータのパワーを曲がりたい方向のみにして、センサのパターンによって切り戻しを行う方法に変えました。方法を変えることで何とか走ることができました。

レーンチェンジはhandle関数を用いてスムーズに走ることができました。練習コースをある程度の速度で走ることができたのでディップスイッチの値を15(モータの出力を最大)にして走らそうとしました。しかし、スピードが速くカーブで脱輪してしまいました。

その調整をしようとしたのが大会2日前だったため、減速プログラムを考える時間がなく、それまで走らせていた値が13だったので、値を13にして大会に挑むことにしました。

大会本番、タイム計測を5回行いました。コース長は60.85mでした。

アナログセンサの故障や、エンコーダの断線などのトラブルがあり、あまり走らせることができませんでした。

計測1回目は、アウトコースから走らせました。スタートバーが故障しているセンサを載せていたので、スタートと同時にスイッチを入れる方式でスタートするつもりでしたが、プログラムを変更していなかったため、スタートすることができずに終わりました。

計測2回目もアウトコースから走らせました。1回目でスタートしなかったので、スタートするようにプログラムを変更して、挑みました。しかし、スタート直後のレーンチェンジで脱輪してしまいました。

原因として、デジタルセンサの調整が甘く、ハーフラインを検出することができずに脱輪したか、もしくはハーフラインを検出しレーンチェンジ後の切り戻しがうまくいかなかったことが考えられました。

問題が分かっているにも関わらず、焦って問題解決せずに3回目を走らせて同じ結果となりました。3回目を走らせたあと、デジタルセンサの調整を行い、まだ走らせていなかったインコースで4回目に挑みました。

4回目は何とかスタート直後のレーンチェンジを突破することができました。

しかし、今度は坂道を下った後に、センサがラインをまっすぐにトレースせずに脱輪しました。センサがラインをまっすぐにトレースしなかったので、アナログセンサに異常があるのではないかと考え、テストプログラムを書き込み、アナログセンサの状態確認を行いました。しかし、故障はしていなかったので、会場の照明のばらつきが原因だと考え、5回目に挑むことになりました。

5回目は再度アウトコースから走らせました。5回目はスタート時からセンサがラインをまっすぐトレースせず、レーンチェンジ後に脱輪してしまいました。走行後、センサの裏面を見るとアナログセンサ周辺にほこりが積もっており、これが原因であることをつかみました。

自由工房では走っていたのに、大会会場では走らなかった。自由工房だけで走っていては意味がない、大会会場で走って結果が残せてやっと意味がある。ということを身に染みて実感しました。

今回の大会の上位の選手のタイムは14秒前半~15秒台でした。最速は14.10秒です。

大会終了後に、その方の話を聞く機会があったので各箇所の速度を聞いてみると、T600(直線)で6m/s、R450(急カーブ)で3.8m/s、R600(緩いカーブ)で4.?(小数点以下は聞き漏らしました)、レーンチェンジで5.5m/s(クランクに関しては聞き忘れました)と驚く数字ばかりでした。また、マシンの車高も私のマシンの1/2くらいでした。マシン作りも制御もしっかりと時間をかけて行われているんだなという印象を受けました。

今後の課題として、まずはEEP-ROMで走行記録を確実に取れるようにログのプログラムの見直しを行うこと、それと同時でmicroSDでもログがとれるようにプログラムの記述、この2点が終わり次第今使っているマシンの限界値を知るために走行記録をもとにプログラム調整を行っていきたいと思います。ハードウェアも考えたいですが、今のハードの限界値を知らない限りできないと考えています。

悔いが残る大会でしたが、そこから得られたものはたくさんあります。これらを糧にして10月に行う試走会、今後行うであろうOECU杯に向けて頑張っていきたいと思います。

大西智之君(電子機械工学科3年)

今回、去年参加したロボットを改修した物で参加しましたが、完走できませんでした。原因はアナログセンサの不調とそれに対しての準備不足です。

不調の原因は、運搬時の梱包不足です。梱包時にアナログセンサをセンサバーと一緒に入れてしまったことで右端のデジタルセンサが壊れてしまった可能性が非常に高いです。

加えて、そのようなときのために予備のアナログセンサを用意しておらず、走ることができませんでした。

今回の原因とは関係ありませんが、スタートバーを検知するセンサが非常に壊れやすいため今後なにかしらの対策をしなくてはいけないと考えています。

昨年に続いて2度目の参加なので、今回は完走してタイムを残していきたいと思っていたのですが、自分の不注意によりこのような結果になってしまったことに悔しさを隠し切れません。

早急なる対策を行い、開催を予定している電通大杯に向けて頑張っていこうと思います。

三村祐希也君(電子機械工学科1年)

目標は完走でしたが、結果的に、完走できませんでした。

完走できなかった原因は、カメラをセンサとして使う処理が完成してなかったことです。

なぜ完成していなかったのかというと、次の2つが原因として挙げられます。

1.カメラから得られる情報が、計測時と走行時でかなり大きく違った。

2.1の結果、既存のデータ処理と異なったデータ処理をした。

まず1つ目の、カメラから得られる情報の違いです。これは計測時ではパソコンディスプレイに表示する処理があり、それによりカメラの露光時間(カメラがコースを見る時間)が、走行時と大きく変化したことで発生しました。

結果、計測時には白黒のはっきりとしたデータが得られていましたが、走行時には、はっきりとしたデータが得られなくなっていました。

その結果2つ目の既存のデータ処理と異なるデータ処理を行いました。既存のデータ処理では、カメラから得られるデータの一部分を抽出し、白と黒を判定していました。

ですが、今回使用したカメラでは、しっかりと白黒が出ないことがわかり、一部分ではなく全体の平均輝度からクロスラインやハーフラインといったマーカーのみを検出するようにしました。

それにより、マシンの走行制御も、一部分のデータを使用した制御ができなくなり、マシンの制御方法も大きく見直すことになりました。以上の2つが原因だと考えられます。

次に今回設計した車体についてです。

今回の車体は高校生の時、使用していたマシンの設計を画像処理専用に設計変更し、不備があった点を細かく修正したものです。

以下に示すものが、マシンの主な諸元と図1が全体写真になります。

重量(電池込: タミヤ ネオチャンプ)

  • 全体 763.9g
  • 前輪荷重 444.1g
  • 後輪荷重 320.8g
  • 前後輪重量比 58:42
  • トレッド

  • 約173mm
  • ホイルベース

  • 約165mm
  • 図1 マシン全体写真

    制作した結果、重量は700g台で完成できたので、良かったと思います。

    ですが、今回サーボ(ハンドルを動かす機構)のギアを樹脂製に変更し前輪荷重が減ると考えたため、後輪のモーターを後輪軸より前に設置しました。

    その結果、前後輪の重量比が大きく前よりになってしまったので、モーターは後輪軸の後ろでよかったかなと思います。

    最後に今後の予定です。今後は、次のことについて行います。

  • 今回使用したカメラと、高校までに使用していたカメラの2つを用いて比較検討
  • LED照明の位置の検討
  • ホイールの制作方法変更
  • 以上3つです。

    まず1つ目のカメラについてです。今回、技術交流会にて、前回のルネサス大会に今回使用したカメラで出場した方に話を聞くことができました。

    その方から、このカメラが白黒はっきり見えるには3ms程度の露光が必要だと聞きました。そこから、換算すると、カメラからデータが得られる周期は約333FPSということになります。

    高校で使用していたカメラの場合だと約450~350FPSの周期でデータが得られます。ここから考えると、1次元で333FPSの今回のカメラと、2次元で450~350FPSの高校でのカメラを比較すると、この状態のままでは、今回のカメラが優先的に使用する要素がありません。

    ですが、白黒がはっきり出ない状態も含めると、今回のカメラでは、最速で1000FPSくらいの周期でデータを得ることができます。よってこの状態で、2つのカメラのどちらがよりよいデータが得られるかを比較検討します。

    次に2つ目のLED照明の位置です。今回は、当初の予定では今回使用したカメラが、コースを横に広く見られることを利用して制御しようと考えていました。しかし、前述の処理を行ったことで、横に広く見る必要がないということに気づきました。

    そこで、今回のカメラは露光時間が短くて白黒がはっきりと見えないことから、コース中央付近をしっかりと照らす形に変更して、得られるデータがどう変わるかを検討していきます。

    最後にホイールの制作方法です。今回使用したホイールは、アクリル板を積層して制作しました。この方法で制作したホイールは、生産性が悪い割に、強度が低いので、一度3D先端造形加工センターの3Dプリンターを用いて制作しようと思います。