ロボットで投げ技! MISUMI presents第13回ROBO-ONE Ligh レポート

集合写真

2016年9月24日~25日、神奈川県立青少年センターにおいて「MISUMI presents第13回ROBO-ONE Ligh」が開催されました。大阪電気通信大学自由工房から出場した関 悠伍君(電気電子工学科2年)が史上初の投げ技を決めて3位に入賞。技術賞も受賞しました。

誰もやっていない大技に挑戦

OneShot(5) - コピー

今回、MISUMI presents第13回ROBO-ONE Lightに「OneShot」という新型のロボットで出場しました。

ROBO-ONE大会のルールが厳しなってきて、できることが限られているので、まだ誰もやったことがないことに挑戦しようと思いました。

大会では、ルールでいくつかの「大技」が定義されています。大技を決めると、通常1ポイントのところ、2ポイントをもらえます。ROBO-ONEは3分1ラウンド3ポイント制です。1ダウンで2ポイントを得られるのは、非常に有利です。

しかし、失敗するとダウンも取られる上に機体へのダメージも大きく、リスクが高いのです。

モノ作りをする再には、誰もが安全を考えるため、自分のロボットが安全な位置から攻撃できるように拘ります。しかし、それをやっているとみんな同じ攻撃になってしまいます。手の内も読まれ、操縦技術が勝敗を分けることになります。

私は、操縦がそれほど得意ではないため、他の人に勝つために機体の設計やアイデアで勝負しようと考えました。そこで、大技に挑戦することを決意しました。

ルールで定められた大技は、2種類あります。

1つ目は、相手を宙に浮かせることが条件です。つまり投げ技です。

2つ目は、ハイキック。腰より高い位置に足を上げて相手に蹴り技を決めれば認められます。

投げ技は、頭についているハサミで相手を掴み頭上まで持ち上げました。OneShotは身長40cm。投げ技の準備態勢にはいると腰をかがめるので、ハサミを頭上に上げると35cm位になります。

その位置でハサミを広げれば、相手はリング上に転がり落ちるしかありません。

ロボットを頭上に高く持ち上げた瞬間、審査員席からも観客席からも「おぉぉぉ~」とどよめきが起こりました。思わず、ガッツポーズを取るくらい、嬉しかったです。

大技実現のための設計

誰もやっていないことを実現するためには、極端なことをする必要がありました。ロボットの体重が1kgという制限があるので、とにかく軽くするための工夫をしました。

投げ技を決めるために、トルクの大きなモータを搭載する必要があります。出力が高いモーターは、サイズが大きいため1kg級のロボットに採用するには、重すぎます。

通常の二足歩行ロボットは、17~21自由度がありますが、軽く作るためにモーターの数を減らしました。

自由度が少なくても、投げ技ができるようにするのが大変でした。何よりも、規定の重量1kg以内に納めるための軽量化に苦労しました。

普段は材料にA5052のアルミを使用しますが、A2017ジュラルミンにしました。ジュラルミンの方が思いけれど強度があるため、思い切った肉抜きをして軽いフレームを作りました。曲げ加工をすると強度が落ちるため、曲げのないロボットにしました。

基板の保護などは、アルミより比重が軽いアクリルを使用しています。

モーターは、近藤科学株式会社のKRS-2572HVを使いました.出力が25 kgf・cmありので、下半身に足首意外の7個搭載しました。

上半身は、KRS-4034HV。このモデルは出力が41.7 kgf・cmです。相手を投げ飛ばすために、胴体の軸にはダブルで搭載しました。デュアル駆動なので実質80 kgf・cm強でています。

ハサミでロボットを持ち上げた時は、モーターからの距離は10~20cmの距離になるため、重量1kgのロボットなら、ちゃんとつかめれば理論値で約400%の安全率です。

制限された自由度で攻撃技を作る

OneShot(4)

ロボットを設計するとき、たくさんのモーションを実現したいと考えて自由度を増やす傾向があります。最近のヒト型ロボットは17~21自由度で設計することが多いです。ライト級では、モーターの軽量化が進み13自由度が主流です。

今回は、極端なことをやるために、腰に大きなモーターを2個搭載しました。必然的に、重量制限により自由度を増やせなくなります。下半身に9軸、上半身2軸の計11軸で設計しました。

自由度が減ると攻撃パターンも少なくなります。私は、大技に賭けることにしました。技に失敗すると、自滅してしまうリスクがあります。

搭載モーションが増えると、使いこなすための操縦練習が必要になります。「OneShot」には攻撃パターンが3つしかありませえん。投げ技とハイキック、そして捨て身技です。ヒットすれば、確実に勝てます。大胆な設計をする以上、その大技に賭けました。

私は操縦が苦手なので、簡単にしたかったというのもあります。

試合で大技を披露

OneShot(6)

試合はトーナメント戦で、準決勝まで4試合。敗者復活戦を入れて5試合行いました。

ライトクラスに出場できるのは、重量1kg以下の自作機と、市販キットの機体です。市販キットの純正は重量が2kgあります。安全率400%で設計していりうので、2kgの機体を持ち上げるパワーはあります。だけど、持ち上げると自分の重心移動が追いつかなくて、投げられませんでした。

1回戦、2回戦は自作機と対戦しましたが、投げ技を出す前に勝負がきまりました。3回戦と準決勝は市販機だったので、どうしても投げられませんでした。

3回戦は、判定にもつれ込んだのだけど、私の方が果敢に攻めていた点で勝利をいただきました。

準決勝は、ハイキックを決めました。腰より高く足を上げてキックで相手を倒せば、ハイキックと認められます。市販機ロボットに勝つためには、ハイキックを決めるしかありませんでした。

ハイキックが決まったのは、この一度だけでした。

「投げ技を決めるのは無理なのか……」と諦めかけたんですが、3位決定戦の相手が自作機でした。しかも、自由工房で技の練習をしていたときに、仲間に用意してもらったのとそっくりなロボットだったんです。

「これは、行くしかない!」と思いました。

技を決めた瞬間は、審査員席も客席からも「うぉぉぉ~!」と歓声が上がりました。

投げ技を仕込んでいることは、予告していなかったんです。それまで不発に終わっているときも、ハサミで相手の頭を叩いているようにしか見えないから、誰も、OneShotが対戦相手を頭上に持ち上げるとは、予想できなかったと思います。

大きな歓声を浴びた瞬間、「ぅっしゃー!!」と思わずガッツポーズが出るくらい嬉しかったです。気持ち良かったです。

今後の目標

今大会では、いい見せ場を作れて本当によかったです。今回はまだ大技に挑戦する人は少なかったけれど、次回以降はチャレンジする人が増えると思います。投げ技の対策を練ってくる人もいるでしょう。

私は、ライトは今大会限りとして、次は3kg級に挑戦したいです。元々、この大会のためだけのつもりで、機体名も「OheShot = 一度きり」と名付けました。技も一度きりしか出せないので、ダブルミーニングで。

もうひとつの目標は、後輩の指導に力をいれて予選を通過し本選出場を経験させることです。

私は高校時代から二足歩行ロボットをやっているので、5年目になります。が、同期の大学からはじめたメンバーは2年目です。大会に出場するといろいろな経験ができます。それをみんなと共有できるようにしていきたいです。

自分が出場すると、どうしても自分のロボットに集中してしまうので、自分が勝つことだけではなく、プロジェクト全体をレベルアップしていくことも考えたいです。将来、モノ作りを教えたくて教職を取っているので、後輩達の指導には力をいれていきたいです。

もちろん、自分もまだ3位ですから、上を目指して挑戦してゆくつもりです。